オートマトン -Online- 推敲中
 結衣は黙ったまま、地平線を見つめていた。

 祥平は体を動かし、左ポケットからカイロを取り出す。

「ちぇ、パサパサに固まってる」

 そう言って砂の上に使用済みのカイロを投げ出した。

「寒い?」

 結衣の問いに今度は祥平が黙ったまま、結衣を抱きしめていた。

 足の先はジンジンして痛く、手の指は冷えきって感覚がない。

「なんで、いまさら日の出なんだ」

 結衣が誘ったとき祥平は最初にそう言った。

 その気持ちは分からなくもない。

 大学1年のときに初めて2人で日の出を見に行って、あまりの寒さに心底懲り、翌年からはどちらからも誘いの言葉が出なかった。

「いまだからこそ、見たいの」

 普段なら祥平が否定した場合、すぐに意見を変えてしまう結衣だったが、どうしても日の出が見たかった。

 日の出を見て、心機一転、新しい自分に生まれ変わろうなどと、もうさすがにこの歳では思っていない。

 明日の自分は今日までの自分の行いの積み重ねだと、もう痛いほど分かっている。

「おねがい」

 ただ純粋に日の出が見たかった。

 太陽神界のアキス王が呼び込む太陽ではなく、リアル世界に存在する圧倒的な希望の源。

 新しい世界が見え始めた自分の目に、太陽はどのようにうつるのか。
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