オートマトン -Online- 推敲中
「私の大切な仲間」

 結衣は自然と顔をほころばせながら言った。

「TYVM」

「ん?」

「オンラインゲームでね、お礼を言うときは、TYVM(ThankYouVeryMuch)っていうんだよ」

 空が徐々に明るくなりつつある。

 海の向こうで、船の明かりが点滅しながら地平線沿いを進んでいく。

「わたしって、助けてもらってばっかり」

 祥平は、結衣を後ろから抱きしめたまま、冷たい空気を思いっきり吸って、寝不足でボーっとした頭を無理やり起こす。

 結衣はそれに気づかず、星の消えた空を見つめながら続ける。

「生きるってことは、人と関わらなければできないことだよね。生きていれば、時には関わりたくない人とも関わらなければいけないこともある。―――そんなときに、柔軟に対処できるかどうかで、生きやすさががらりと変わるんだろうなぁ」

 刻々と夜から朝に変わって行く空の変化を、すべて捕まえようとでもするように、結衣は空を見上げている。

「対処できるかどうかは、たくさんの人に接して、経験するか、あるいは人を見て学ぶかしかないよね。わたしね、怪我してよかったと思うよ。怪我して自分が持っていた健康がどんなにすばらしいものなのか分かったし、幸せって何なのか、何のために生きているのか、やっと分かった気がするの。なんだか、生きるコツみたいなものを掴んだ気がする」

 祥平の鼻の先で、結衣の柔らかい頬が丸みを帯びていく。

 祥平は、結衣をぎゅうと抱きしめる。

「祥平?」

「ごめん、……ちょっと眠くなってきた」

「え?これから、『オートマトン -Online-』の事、話そうとしてるのに」

「聞きたいよ」と祥平は結衣の耳元でつぶやいて「けど、眠い」と続ける。

 日の出まで後40分。

「早く話さないと本気で寝るよ」

 結衣の肩に首を乗せてきた祥平は、心配事のなくなった子供のような顔で目をつむっている。
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