オートマトン -Online- 推敲中
 大陸が徐々に後ろに遠ざかっていく。

 ところどころに岩が突き出しているが、それ以外はどこまでも広い水面が続いている。

「アル、そんなに前に行ったら、落っこちちゃうよ」

 甲板の縁に立つアレキサンダーとユイの足元で、からくり人形のアルメェールが海面を覗き込んでいる。

「今日は水曜日だから良く釣れるはずだ」

 アレキサンダーの隣でユイも釣り糸をたらす。タポンと音がしてミノーが海上に浮かんだ。

「水曜って釣れるんですか?」

「ん?知らない?かなり有名な太陽神界のオカルト」

 朝日はまぶしいほど海面をキラキラと反射させている。

「おっ!」

 アレキサンダーの竿が大きくしなりはじめた。

 右へ左へ竿が揺さぶられるが、体をうまく使って徐々に獲物の体力を削っていく。

 バシャーンっ!!!!

「ひゃああああ」

「うっしゃぁ!」

引き上げた竿の先に、大きなマグロのようなマリントゥーナがぶら下がっていた。

「すごーいっ」

「さすが水曜。実際、統計取ったプレイヤーがいて、水曜はまじで釣りの成果がいいらしい」

「へぇぇ」

「SS取った?」

「SS?」

「スクリーンショット。写真が撮れる」

「ええ!どうやって?!」

「手動でもパソコンのキーボードを使って取れるけど、確か、からくり士はオートマトンに、自動的にSSを取る機能がついてたはず」

「そんなことが……ぜんぜん知らなかったです」

 そう言いながら足元でユイを見上げる小さなアルメェールを見下ろす。

「あとでログアウトしたときにチェックしてみたら?もう何枚か撮れてるはずだよ」

「アル、えらーいっ」

 ユイがアルメェールの頭を鉄の兜越しになでた。

 アレキサンダーはマリントゥーナを慣れた様子でトレジャーバックにしまう。

「いつも思うけど、このトレジャーバックすごいですよね、なんでも入っちゃうし」

「(笑)。ずっと入れてても腐らないしな。あっ、きてるぞ!」

 ユイの竿が恐ろしいほどしなっている。
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