オートマトン -Online- 推敲中
「え?一緒に行ってくれるの?」

 ユイがエプロン男を見上げると、男は両手にステーキをぶら下げて口を開く。

「ドラゴン退治にステーキはもってこいだよ」

「その代わりに300Goldで買えって?(笑)」

「わたし買います」

 アカネが手を上げると、ユイも笑いながら購入した。ルークも「攻撃力アップは美味しいからな」としぶしぶ財布を出す。

「まいど~」

 エプロンの男は楽しそうに微笑む。

 ルークはステーキをさっそく頬張りながら、エプロンの男に視線を流す。

「名のある料理職人が、なんでそんなに頑張って商売する必要があるんだ?」

「え?もしかして有名人なの?」

 ユイの言葉にルークがさらりと言ってのける。

「オートマトンオンラインのミリンを知らないプレイヤーは初心者だとバレるぐらい、有名な話だ。こいつは太陽神界の調理スキル、No.1プレイヤーだ」

 ルークの言葉にエプロンの男ミリンは苦笑する。

「そう言えば聞こえはいいけど、実際は廃人(リアルよりゲームの世界で過ごす時間が長い人)ってだけだよ。それに高スキルプレイヤーといえども所詮一般プレイヤーだよ」

「そうなの?」

「うん。例えばこのステーキ。攻撃力アップのステーキは戦闘の必須アイテムってこともあって安定して売れるし、この世界のステーキの供給はほとんど俺が担ってるから、儲けるつもりでどんどん値上げすることだってできる。でも太陽神界はゲームの製作者側の人間であるGM(GameMaster)が常に市場を見張っていて、物価の変動をできるかぎり安定させようと活動している。安易に値上げしようものなら忽ち、売り手側の人間が赤字になるぐらいの仕打ちをしかねない。それに、俺も、値上げして初心者が遊べなくなるゲーム環境は作りたくない。そんな理由で、俺たち高スキルプレイヤーのプレイスタイルは、金儲けというよりはむしろ、安定した供給を安定した価格で、という義務の域に達してるんだ」

「ふん、案外めんどくせーんだな」

「いや、それが楽しかったりするんだよ。さぁ、リーダー。行くんだろ?リアルの時間はどんどん過ぎてるよ」

 ユイはミリンの言葉に我に返って、緊張しながら拳を振り上げる。

「よーし!!いざ、ドラゴン討伐にしゅっぱーつ!」
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