オートマトン -Online- 推敲中
「そう、なんでもありなんだよ。だから、ユイさんも情けない自分が嫌だなんて思う暇があったら、もっと自由に好きなことをやってみたらいいよ。」

 アレキサンダーはユイの後ろから強く言った。

「あのな、俺から見ればそんな非生産的なこと考えてるなんて、余裕があるとしか思えない。別にユイさんが苦しんでないとかそういう意味じゃなくて。何で仕事をしなければいけないか、考えたことある?お金がないと人は生きていけないんだよ。もしユイさんの大切な人たちに何かあっても、自分が強くなければ、なんの助けもしてやれないんだよ」

「……でも、いまの私はトラウマが邪魔して、頑張りたいのに頑張れないの。みんなも少し休んだほうがいいって言ってくれてるし」

「俺には、頑張らない言い訳をしてるようにしか聞こえない」

「―――」

「ユイさんは、いつでも頑張りたいときに頑張れば就職できると思ってるんじゃないの?もしそうなら、甘いぞ。社会に出てみればわかる。みんな生きるために、自分やその家族を守るために必死に競争してるんだ。そんな悠長なことしてて、頑張りたいと思ったときにはもう、社会はユイさんを必要としてくれないかもしれないよ。そうなったら結局周りに助けてもらうことしかできなくなる。それこそ自己嫌悪するだろ。もうそこまで行ったら、自分の気持ちがどうとか、そんなこと恥ずかしくって言えなくなるよ。まだ選択肢が多い今だからこそ、がんばるべきだと俺は思う。いま頑張らなくていいほど、君の立場に余裕はないはずだよ」

「―――」

「あぁぁ、また言い過ぎたか」

 アレキサンダーは困ったように苦笑した。

「ごめん。つい、はっきり言い過ぎるんだ。熱くなると止まらなくなって」

「ううん」

(そうだね。この苦しみはさっさと自分で乗り越えるしか、前に進む道なんてない)

 ユイは雨で煙る耕地の手前、アレキサンダーに抱きしめられながら大木の下で泣いた。

 それと同時に結衣はパソコンの画面の前でポロポロ涙を流していた。

(ほんとうは、逃げたくないよ。現実逃避なんて、したくないよ)

「トラウマになってる嫌なことを考えなくなるいい方法が1つだけある」

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