アイスクリーム男子の作り方【アイスクリームの美味しい食し方番外編】
「うそ、破れたんだけど。」

俺たちは、
今一つの試練にぶつかっている。

「もっかい、
哲さんからだわ。」

母がまた新しい紙を持ってくる。

「もう、めんどくさいから、
何枚か書いとけば?」

つぐみさんが叫ぶ。

「ちょっとなのよ。
ほんとに、
ちょーっと筆圧強くしたら、
破れちゃうのよ。」

チカは手首を回した。

「とりあえず、
新にまでは、頑張って回しましょう!」

店長は、みんなに気合いを
入れた。

「良さん、あと3枚しかありません。
俺、バイクで取ってきますか。」

三田さんが叫ぶ。


「いや、待て、三田。

皆さん、
ラスト3です。

集中しましょう。」


「「「うっす!!」」」

良さんが掛け声をかける。

父と叔父さん叔母さんは同意書をすでに用意してある。
これには、
その他欄に
婚姻を同意する旨を記入し、
捺印。

店長と良さんが
保証人にサイン。

そして、
最後に
俺とチカが、
本籍地、現住所、
生年月日と名前を書いて捺印すれば、
クリアとなる。


何がって。


「離婚届同様手強いわね。
薄すぎるのよ。紙が。」

わー、縁起の悪いこと言うなよな。


そう、俺たちがしているのは、
婚姻届の作成である。

入籍は、
学校と相談してからなのだが、
とにかく、みんなが揃っている今
書き上げなければならない
それは、緊迫した状況なのだ。

「きっと紙をできるだけ
安くあげようと、
国がケチってるのね。」

チカは、回ってきた婚姻届を
慎重に受けとり、
筆をとった。

「違うかもよ。

婚姻届は、最初の試練を

離婚届は、最後の躊躇を
与えてるんじゃないの?」

俺は素直にそう言うと、

「新ってマジで店長に似てきた。」

とつぐみさんに制された。

今のはキザって意味だ。


ごまかすように、
咳払いをし、
ようやく回ってきた婚姻届に
筆を立てた。




さーて、と。

「あヾっ!!」








「婚姻届の攻略を」

おわり
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