ドロップは涙味
30分ほど待つと、病室のドアが開いた。

そこで私が目にしたのは、かつて見たような夕の姿。

ガラッ。

「あれ、みんな…?」

クラスのみんなが、病室に入ってきた。

「み、んな、どうして…」

「中島が、電話してきたんだ。広瀬が、危ないって…」

「圭が…?」

圭にはいつも、助けてもらってばかりだよね…

「…なた」

「夕!」

「日向、…みんな…?」

夕は薄く目を開く。

「…あたし、っみんなとっ…過ごせてっ、幸せだっ、た…。」

だんだんと呼吸が浅くなっていく。

「日向っ…」

「なに、夕?」

私の涙が、夕の顔に落ちていく。

「側にいて、っくれて、ありがとう。っ大好きだよ…」

夕の目が、閉じていく。

「ダメッ!!!!!夕!置いてかないで!!!!」

握っていた手が、次第に冷たくなっていく。

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!夕!!!!!!!!」

「日向…」

圭が私の肩を抱く。

「いやっ、夕!!起きて!!!!!行かないで!!!!!」

「日向、もうやめろ……」

背中に強く腕が回る。

「っ、夕…夕…」

圭の服が、私の涙で濡れていく。

やだよ……
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