ぼくのまわりにいる悪い人とぼくの中にいる悪い人
気持ちが良かった。

朝、この海岸通りが紫色になる。

昔よく聞いた、クールスの《紫のハイウェイ》という詩を思い出す。
同時にガキの頃、弥生を単車のケツに乗せて走った時の事を思い出していた。

そのまま適当に潮の香りのする場所へ…

車の窓を全開にし、足を放り出し、いつの間にか寝てしまう。


《ぶん太…アタシ大人になったら子供は絶対いらない!》

弥生は昔そんな事を言っていた。

《なんだよ…その目は…ふんっ!ガキのくせに…ママなら帰ってこねぇーぞ!》

酒を飲んで帰ってきた継父だ。
隣の窓からは聞きたくなくても聞こえてくる。

《今ごろ客とモーテルだよ…ったく!とっとと金持って帰ってくりゃーいいのによ…》

《幸子!オメェ…ママが仕事に行く時の目付きにソックリだな!》

弥生は家で何かあると窓を叩いて合図。
そのまま窓からぼくの部屋に入ってきた。

やたら明るく。
目は真っ赤になりながら。


そんな事も思い出しながらウトウトしていた。


気がついた頃、すでに昼になっていた。

起きた時には、何故ここまで来たのか…
自分でも意味が解らなかった。

でも…姫様だけは頭に残っていた。
< 34 / 168 >

この作品をシェア

pagetop