ぼくのまわりにいる悪い人とぼくの中にいる悪い人
『あー考えてねぇ訳じゃねーぜ、大体、風呂屋だって俺が行けって言った訳じゃねぇよ』『言ったとか言わねぇとかの問題じゃねぇだろうが!』
『んな事より 頼むよ、なっ30万!どうしても作んねぇとヤベぇんだよ』
『あ?30?ふざけんなよ…お前、どうしたの?』
『とにかくヤベェんだよ…たのむ!』
ぼくは土下座して頼む松下を見て情けなくてどうしようもなかった。
金が無いわけではない、当時裏カジノでルーレットのディーラーをやっていたぼくは200万からの給金を毎月もらっていたからだ。


毎週土曜日の夕方から集会を楽しみにして、一緒にに単車を磨いていたガキの頃は松下も一本筋の通った奴だった。
それがどうだ、てめぇーの女を風呂屋に沈めるような外道になって土下座している。
額を床に擦り付ける姿も痩せて見える。


痩せて…?


『おい、松下?お前シャブやってんじゃねぇだろうなー?』
『…これ程頼んで無理ならいいよ、ぶん太、わるかったな』


ぼくが松下としゃべったのはあの日が最後だった。


その日から4日たった時、弥生から携帯に電話が来た。
『ぶん太…松下君…死んじゃったよ…友美から連絡あって』
やはり松下はポン中になっていた。
< 4 / 168 >

この作品をシェア

pagetop