ぼくのまわりにいる悪い人とぼくの中にいる悪い人
このクリスマスイブの夜。
健とさつきに誘われ家を出た時の所持金は23000円だった。


タクシーを降りてから酔ったままフラフラと町を歩く。

どっかの駅前だった風俗っぽい看板の店。

その店の裏口から女が出てきてぶつかった。

ぼくは特に謝りもせずに通り過ぎようとすると…

『ねぇ…ぶんちゃん?』

ビックリだった。
死んだ松下の彼女だった友美だったのだ。
『久しぶりー、何年振りかなぁー…あっ今ここにいるんだっ』
看板を指差しながら友美は言う。


『…おぅ…久しぶりだな、元気そうじゃん…』

『どうしたの?こんな所で?飲んでたとか?』


友美は松下とつきあっている時より数段いい女になっていた。

暇なら飲みに行こうよ、そう言われた。何でも面白い店が木更津に出来たとかで…

『ここで待ってて、車回してくるよ!』
5分位待っただろうか、裏側の路地からベンツが走って来て僕の前で止まる。

右側の窓が開き…

『ぶんちゃん!早く乗って!店長に見られるとうるさいから』

ぼくはそのまま言われるがままに乗る。
『懐かしいねぇ…』
『…』

あえて松下の事は口にしなかった。
友美がそこまでの事を話したいとは思えなかったからだ。
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