ぼくのまわりにいる悪い人とぼくの中にいる悪い人
『兄さん、さっきも言うたけど内らのシマでチョロチョロすなや、あんたがベガスでやっとったんとは桁がちゃう…』


ぼくは納得のいかないまま帰らされる事になる。

『聡!お前が途中までいったれ』


聡っていうのか…この野郎…


連れられて出ようとすると、会長が振り向きぼくに話しかけてきた。


…何を言われたか覚えて無い。


居酒屋のおっさん!

…ぼくはあの時の呑みながら歓喜した代打サヨナラスリーランを思い出した。



『ほー、兄さんどこぞでわしに会うとるのう、折角やから言うといたるわ…中途半端はアカンわ、こんな世の中や、やるならやる、やらんのならやらん、どっちかにせな喰われるだけや』


『…兄さんはええ目をしとる堅気でやった方が仕事できるんちゃうか?ズッポリやるんやったらホンマに覚悟せな…なぁ…』


『…』


場所を特定させない為だろう

地下駐車場からはまたトランクの中だ。

…別に探すつもりも唄うつもりもないが。



トランクの中でぼくは震えていた。


チャカで撃たれた事は勿論ビビった。

しかし本当に怖かったのはそんな飛び道具ではない。

会長の目だ。


あんな恐怖は味わったことが無い。
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