ぼくのまわりにいる悪い人とぼくの中にいる悪い人
そして、何度となく同じ映像を繰り返している。


1人のコメンテーターが言う。


『大事な家族を失った悲しみからの行動なんでしょうねぇ…しかし、人間は現実と向き合い、自分と向き合わないと暴力からは何も生まれませんからねぇ…悲しい事件ですね』


…知った風な事言いやがって…


ぼくはテレビを消しミンクに向かった。


『健ちゃんにかける言葉がないよ…なんて言ってやればいいんだろう…』


弥生を連れて面会に行くところだ。


実はぼくも見つからなかった。


『おれさぁ…』

『ん?』

『健の事はいろんな意味で心配だよ…だけど…』

『だけど?』

『…』

『あー!マック寄って!マック!』

『…』

『あっ、えーと…ベーコンレタスバーガーのセット、飲み物アイスコーヒー、ぶん太は?』

『同じでいいっす』
『だけど…何?』

『ん?あぁ…なんか微妙に羨ましいみたいな感覚?』

『あたしは、ぶん太の考えてる事、大体判るよ…』

『あたしだって犯人は殺してやりたいね、さつきの幸せそうな顔が夢に出てくるよ、だけど健ちゃんはあそこまで愛してたんだよ…家族をそこまで愛する感覚ってぶん太には無いかもね』
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