ねぇ、気付いて?
1章
「こらっ、朝比奈!」



この声はアイツだ。
だいっきらいな。



「先生じゃん」

「『先生じゃん』じゃない!廊下を走るなと何回言ったら分かるんだ!」

「えー、急いでるから見逃して!」

「お前はいつもそうだろ!大体何をそんなにだな…」



うっわ、ウザッ。
話長ぇんだよ、クソが。
廊下走ったくらいで学校壊れないんだしいいじゃん。



「先生見逃してあげてください」



後ろから聞こえる透き通った声。
この声っ。



「佐々木さん」

「先生。彼女は今日下部先生によばれているんです。見逃してあげてください」

「そ、そうか…?優等生のお前が言うなら、しんじる」

「ねっ、じゃーねー、先生!行こ、佐々木さん」

「はい」



先生が見えなくなったのを見て、わたしは言った。



「さんきゅ、佐々木。助かったわ」

「いえ」

「にしてもアンタってほんと便利だわー」



佐々木明佳里。
クラスの優等生で私の言う事を聞くいい奴。
地味で浮いてたから、便利だわ、まじで。
いやー、地味子はいいな。
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