メモリップ
香織は再び、洗面台に向かい、自分の顔を見つめた。


約半年前の自分では考えられないであろう、荒れたカサカサの唇。


化粧が完璧になされた美しい顔の、手入れのされてないソコだけが、むしろ逆に目立っていた。


香織はレバーを押して勢いよく水を出し、唇をパシャパシャと濡らした。


レバーを上げて、キュッと水を止める。


鏡に写る顔には、半年ぶりに洗われた みずみずしい形の良い唇が、そこにあった。
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