メモリップ
あれからもう半年が経つのね。


あの人と交わしたキスを最後に、私の唇は、半年前から時が止まっている。


この半年間、唇だけ洗うことを極力 避けていた。


揚げ物類も食べないようにしていた位だ。


なるべく唇を、汚すことのないように するために。


この唇の上に、何かを『上書き』すれば……


それで完全に、彼と触れ合った『痕跡』が もう、消えてしまうような 気がして……


もう二度と彼に、触れられる事も触れれる事も、ないから。


この唇だけが、彼と最後に触れた場所だから、『とっておきたかった』んだ。
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