メモリップ
洗面台の真横にある、小さな窓から見える夜空。


輝く星たちを見上げて、香織は祈るように両手を合わせた。


約半年前に、車に轢かれて亡くなった、愛しい愛しい大好きだった彼の姿を 想い浮かべながら………


この部屋に来てくれた彼を、マンションの前の歩道まで見送って、『バイバイ』と言って、いつものように お別れのキスをしたのが、彼に触れた ― 触れられた最後だった。


熱い体温と、唾液。


私の唇にだけ残る、彼といた『証』。


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