希望のあしたへ
「あたし? 怪我なら良いんだけどね、時間が来れば直るから……」

「怪我じゃないんだったらどうしたんだ?」

不思議そうに亨が尋ねると陽菜が伏し目がちに応える。

「ちょっと心臓がね、もうここも長いのよ。移植が必要なんだけどドナーが見つからなくて……」

この時亨は陽菜のまさかの言葉に驚きを隠せずにいた。

「なんだよ心臓って、大丈夫なのかよ」

心配な表情で尋ねる亨に対し俯いたまま応える陽菜。

「アメリカに行けば移植できる可能性は日本にいるより高いらしいんだけどそれには費用が掛かりすぎるの。でもアメリカに行けないからと言って移植できないわけじゃないのよ、日本でもドナーさえ見つかれば移植はできるの。実はね、前に一度移植のチャンスはあったのよ、でも心臓でしょ? 手術したのは良いけどそのまま戻ってこられないんじゃないかって思ってしまって、どうしても怖くて断ってしまったのよ」

「そうだったのか、確かに心臓の手術となると怖いよな。俺お前に悪い事聞いちゃったかな、なんかごめん、俺陽菜がこんな事になってるなんて全然知らなくて」

この時の翔の表情は激しく落ち込み、がくりと肩を落としていた。

「何謝っているの? 亨兄ちゃんが謝る必要ないのに」

未だ肩を落とし落ち込んでいる亨は申し訳なさそうに静かに語りかける。

「だけどさあ、知らなかったとはいえその間何もしてあげられなかったから」

そんな亨に対し陽菜はやさしくフォローする。
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