希望のあしたへ
この時の陽子は大事な一人娘がこれから大手術を行うということで不安な思いが拭いきれなかった。

「ところでおじさんはいつ来るんですか? こんな大事な手術の日なんだからもちろん来るんですよね」

「もちろん来るわ娘の一大事ですもの。でもどうしても日本に着くのは明日の朝になってしまうって」

「そうなんですか、少しでも早く来られると良いですね。せめて陽菜が手術に向かう前に一目でも会えると良いんですが」

「そうね、会えると良いわね」

ここで陽子はちらりと時計を確認した。

「それより亨君明日は忙しいんでしょ、今日はもういいから帰ってゆっくり体を休めておきなさい。それに面会時間もとっくに過ぎているのよ」

陽子の気遣う言葉に亨は大変恐縮してしまう。

「お気遣いありがとうございます。おばさんはどうするんですか?」

「あたしは今日もここに泊まるわ。幸いこの病院には家族のための仮眠室もある事だしね」

「そうですか、おばさんもお体気を付けて。それでは失礼します」

「気を付けて帰ってね」

「はいありがとうございます。おばさんも今日は体をよく休めた方が良いですよ、明日は一日大変なんですから」

「そうね、お気遣いありがとう。今日は早めに休むことにするわね。おやすみなさい」

「お休みなさいおばさん」

お互いにあいさつを交わすと、亨は静かに病院を後にした。
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