希望のあしたへ
【第三章】『陽菜が触れた大きな心』
二日後の日曜日、陽菜の下には母親の陽子(ようこ)が見舞いに来ていた。

陽子もまた陽菜の治療費のためパート勤めをしており毎日陽菜のもとに通う事はかなわなかったが、心の奥底では毎日陽菜のもとに見舞いに通いたいと思っていた。

「ママ今日は来てくれたんだね、ありがとう」

「何言っているの、あまり来てあげられない事の方が申し訳ないわ」

「そんなのいいのよ、あたしの治療費の為に毎日仕事で大変なんでしょ? その位分かっているから」

「ごめんね気を使わせちゃって」

申し訳なさそうに俯いてしまう陽子。

「何言っているのよそんなの気にしなくっていいって。だからそんな顔しないで、ママがこうやって忙しい中来てくれるだけでもうれしいんだから。それにあたし気なんて使ってるつもりないよ」

そう言う陽菜であったが明らかに親に対し気を使っている。

「ありがとう、ママ良い娘に恵まれて幸せね」

直後陽子はある事を思い出した。

「そうそう、頼まれていたこれ持ってきたわよ。この本で良いのよね」

そう言うと荷物の中から一冊の本を取り出した。

「そうよこれこれ、この小説読みたかったのよね」
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