希望のあしたへ
それでも床に伏せ頭を下げ続けるスタッフ。

そんな様子を見ていた陽子がスタッフの下に歩み寄るとやさしく肩を抱きあげた。

「もういいから立ちなさい。大丈夫よ彼も許してくれているんだから」

そう言いながらゆっくりとスタッフを立ちあがらせる陽子。

「ありがとうございます」

礼を言いながら立ちあがったスタッフ、その瞳には涙をためていた。

その後陽子はこのスタッフに優しい語り口で諭した。

「今日の所は帰りなさい。大丈夫よ彼は怒ってないから。その代わり今彼に言われたことをよく覚えているのよ」

「分かりました、本当に申し訳ありませんでした」

頭を下げそう言ったスタッフは、病室の入り口付近でもう一度深々と一礼して病室を後にした。

この時の陽子は亨のスタッフへの対応に感心しきりであった。

「偉いわね亨君、あんな事言えるなんてね。しばらく見ない間に随分大人になったじゃない? あたし感心しちゃった」

「彼もまだ若いですからね、彼よりも若い僕が言えた立場じゃないですけど彼もまだ将来があります。人って失敗を繰り返して成長していくじゃないですか」

「確かにそうかもね、亨君ほんと大人になったね、こんな大人な事言える子に育っていたとは思わなかったわ。陽菜も亨君を見習いなさい」

「分かっているわよ」
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