希望のあしたへ
その言葉に割って入ったのは母親の陽子であった。

「それなら談話室がいいんじゃない? 病棟の両端にあるわよ、あそこならケータイも使えるからそういうのもできるんじゃない?」

「ありがとうママ、それならできるかもしれない」

「よかったじゃないか陽菜じゃあネットで応募したい場合はそこでやればいいよ」

「そうだね、でも一応看護師さんに聞いてみてからのほうがいいかな?」

「そうかもな? それよりお前そろそろ帰らなくていいのか? あまり長居はしないようにって言われているんだろ?」

「そうなの陽菜? 早く言わなきゃダメじゃない」

驚きの表情で尋ねる陽子に対し申し訳なさそうに応える陽菜。

「ごめんなさい、あたし少しでも長く亨兄ちゃんと一緒にいたくて、ねえもう少し良いでしょ」

「わがまま言うな陽菜、これもお前の体の事を思っての事なんだから。だから言うこと聞こうな? 前にも言ったろ、俺も車椅子に乗れるようになったら陽菜のとこに行くから」

「そうよ陽菜、亨君もそう言ってくれているんだから今日の所は帰りましょう」

その声に俯いてしまった陽菜は残念そうな表情を浮かべる。

「分かったわよママ、じゃあ亨兄ちゃん今日の所は帰るね。これありがとう、大切にするね。それじゃあまた来るから」

そうしてデジタルオーディオやパソコン等の礼を言うと母親に車椅子を押されながら翔の病室を後にした。
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