意地悪なきみの隣。
こういう時ってどうしたらいいんだ。
そんなのもわかんねえから、俺はきっと先輩の言うモテるには入らない。
正直、先輩をそういう目で見たことがなかった。
俺らのマネージャーさんで、頼れる、しっかりした先輩。
俺の変化にすぐ気づいて声をかけてくれる気遣いがある人だ。
「…先輩、すいません俺……」
あの時……。
『…いいのに』
大塚先生にコートから外された時に聞き取れなかった先輩の言葉は。
ホイッスルの音にかき消された声は、
『……私じゃダメかなぁ?』
今日の言葉と同じだったのかもしれない。
手をそっと握り、ブレザーから離す。
それが俺の答えなんだ。
「……バアッカ!わかってるよ!ただ言いたかっただけだし!期待なんてしてないから!じゃあね、また明日!」
無理やり笑った先輩はそのまま走って駅の方へと行ってしまった。
俺はしばらく立ち尽くしたまま先輩の後ろ姿をぼーっと見つめていた。