意地悪なきみの隣。


お構いなく顔を近づける。

郁ちゃんのシャンプーの香りがスンと鼻につく。




少し、いじめてやろうと思ったのに。




「やっ……大和くんのバカ!」



そう間近で叫ばれた。


ビックリした俺は少し顔を離すと、少しだけ涙ぐむ彼女がいた。


眉はきゅっと逆ハの字になって、大きな目で俺を睨みつける。



「寂しいのにっ……!大和くんがいない学校は…つまんないのに!話してなくてもずっと……ずっと…大和くんのこと考えてたのにっ…!」



そう訴える郁ちゃんに俺はポカーンで。


緩まった手からするっと抜けた細い腕は、また訴えながら俺の胸をポカポカと殴る。




「バカァ……!バカは大和くんだよっ!なんで考えちゃうのって考えて…ぐちゃぐちゃなのに!話しかけてこないなんて意地悪しないでよっ…」



そう言って、俺の胸を両手で押す。
あまり力が入ってない俺は簡単に一歩後ろへとバランスを崩した。



< 174 / 214 >

この作品をシェア

pagetop