意地悪なきみの隣。



2月の廊下を歩く。
数学教室へ歩いた時と同じ様にひんやりしている。



「あっ…」



思わず声が漏れたのは、目線の先に大和くんがいるから。

男の人と2人で歩いている背中は、ブレザーを着ていない。


あ、あの女の人といない。
今しかないよねっ?



「や、大和くん!」



呼んだ名前は廊下に響き渡る。
ピタッと足を止めた大和くんはくるっと振り返る。

隣の男の人も同じ様に振り返る。



「郁ちゃん?どした?」



うわぁ、泣きそうだ。

久々に私の名前を呼んだ声は、ビックリするくらい優しかった。


近づいてくる大和くんに、どうしていいのかわからず固まってしまった。



「大和、先行くべ」



「あーうん、そーして」



大和くんと一緒いた男の人はそう言って曲がって行った。




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