意地悪なきみの隣。



「あーあ、無理だったわ」



どかっと椅子に座り、カバンの中からタオルを取り出して豪快に拭く。



「おーお疲れ。まあ陸上部には叶わねえよな」



あち〜と言う中島くんの背中をバシバシと叩く高橋くん。


い、痛そう…。



「お疲れって言ってやって」



そんな高橋くんが私の方に顔を向けて小さい声で言う。


タオルで顔を隠している中島くんは気づいてないみたい。



「早くっ」



「う、うんっ…?」



なぜか急かされた私は、背中をちょんちょんと指で触って呼ぶ。



「お…お疲れ様っ!」



なるべく?笑顔で。


かっこよかったよ!……なーんて、言えるわけもなく。




「…………うっせ」



なっ………!!!!

せっかく言ったのに!

せっかく言ったのにーっ!


プイと目をそらしてそのまま前を向いてしまった。


なによなによっ!

体育会くらいもうちょっと普通にしてよ!



「照れ隠しだよ」



隣の陽菜ちゃんからそう言われる。


なんで照れ隠しなの?

どこに照れたのか全くわかんないし、今の言葉には普通返事するもん!


ふーん、もう中島くんなんて知らなーい!


中島くんの頭から目をそらすと高橋くんと目が合う。


顔の前に片手を出して、ごめんごめん、とだけ言う。


高橋くんは悪くないんだよ?


悪いのはその隣の意地悪な男の子なんだから!



怒っていても中島くんが何か言ってくるわけでもなく…暑い中競技がどんどん進んで行く。


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