意地悪なきみの隣。



誰だっけ…持ってたの…。


ええっと……ああっ!


中島くんだ!!!


そういえば中島くんバスケットボール持ってた!


部対抗リレーでそれぞれ部活で使うものを持って走るんだよね?


それで1年の部の部対抗リレーで1走だから持ってるんだ!



「な、中島くんっ!」



中島くんがいる観覧席まで走ると、大きな声で呼ばれて目を丸くする。



「あ、あのっ…来てください!」



紙を広げて見せると目を細めてじーっと見る。




「無理」



「ええっ!」



い、今意地悪言ってる場合じゃないよ!


クラスの子に注目されてるし、このままじゃ最下位になっちゃうよ!


周りを見てみるとまだ探してるから大丈夫だけど…。



「ちょっと中島!行きなよ!バカなの⁉︎」



後ろから陽菜ちゃんの罵声を浴びる中島は、はあとため息をつく。



「じゃあさ…」



うん?




「"やまとくん、一緒に走ろう"って言うなら走る」



え……?


汗をたらりと流しながら優しく笑うその顔が、



「…………やまとくん?」



やまとくんと重なった。



その言葉は、私がやまとくんに向けて言った言葉。


幼稚園の運動会のとき、やまとくんがかけっこで走る相手にすごく速い男の子がいた。


負けたくないから走りたくないってだだをこねるやまとくんに


私がそう言ったんだ。


一緒に走るわけじゃなかったけど、そう言ってたんだ。


覚えてるよ。

だってね、そこから仲良しになったんだもん。



名前が同じなだけで重なってしまうのは変なのかもしれないけど、


それでも今の笑顔は少しだけ、少しだけ似てるかもって…。



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