意地悪なきみの隣。
「西野っ!おい!」
我に返ったのは、高橋くんが私を呼んだから。
中島くんから目をそらすと皆が心配そうに私を見ていた。
はっ………恥ずかしい!
って、そういうことじゃないっ!
今は借り物競争の途中なんだ!
「やっ……やまとくん、一緒に走ろう!」
そう言うと、きみはくしゃっと笑って。
「っしゃ、行くか!」
バスケットボールを持って立ち上がって私の前に来る。
「ほら走んぞっ」
もうすでに何人かは走り出していて、1位はダメかもしれない。
走者が借り物を持って走らなきゃいけないルールだから、私がボールを持つ。
だけどバスケットボールって意外と大きくて走りにくい。
な、中島くん、待ってよー!
私を放って前に出る中島くん。
中島くんがゴールしても私がゴールしなきゃ意味ないんだよ!
「おっせーなのろま。行くぞ!」
そう言うと私の手を握って走り出した。
うっ……わわわわ!
今こんなこと考えてる場合じゃないのに、意識は自分の右手に集中してしまう。
て、て、ててて、手が…!
中島くんの手は、バスケットボールなんて簡単に掴めちゃいそうなくらい大きくてガッチリしてる。
男の子…の手だ。
「うわぁっ!」
そんなことを考えてるといつの間にかゴールをしていて、急に止まった中島くんの背中に激突。
「どんくせ」
それだけ吐き捨てると簡単に手は離れた。
ど、ドキドキ…した…。
私が遅いからしてくれただけだけど、心臓がうるさくて。
いつの間にかゴールしている、そんな借り物競争だった。