意地悪なきみの隣。



「西野っ!おい!」



我に返ったのは、高橋くんが私を呼んだから。


中島くんから目をそらすと皆が心配そうに私を見ていた。


はっ………恥ずかしい!


って、そういうことじゃないっ!

今は借り物競争の途中なんだ!



「やっ……やまとくん、一緒に走ろう!」



そう言うと、きみはくしゃっと笑って。



「っしゃ、行くか!」



バスケットボールを持って立ち上がって私の前に来る。



「ほら走んぞっ」



もうすでに何人かは走り出していて、1位はダメかもしれない。


走者が借り物を持って走らなきゃいけないルールだから、私がボールを持つ。


だけどバスケットボールって意外と大きくて走りにくい。


な、中島くん、待ってよー!

私を放って前に出る中島くん。


中島くんがゴールしても私がゴールしなきゃ意味ないんだよ!



「おっせーなのろま。行くぞ!」



そう言うと私の手を握って走り出した。


うっ……わわわわ!


今こんなこと考えてる場合じゃないのに、意識は自分の右手に集中してしまう。


て、て、ててて、手が…!


中島くんの手は、バスケットボールなんて簡単に掴めちゃいそうなくらい大きくてガッチリしてる。


男の子…の手だ。



「うわぁっ!」



そんなことを考えてるといつの間にかゴールをしていて、急に止まった中島くんの背中に激突。



「どんくせ」



それだけ吐き捨てると簡単に手は離れた。


ど、ドキドキ…した…。


私が遅いからしてくれただけだけど、心臓がうるさくて。


いつの間にかゴールしている、そんな借り物競争だった。



< 36 / 214 >

この作品をシェア

pagetop