意地悪なきみの隣。




「は〜やっとお前のテスト勉強から解放されんのな」


午後5時。

伸びをしながら少し嬉しそうに中島くんが言った。


そっか。
明日がテストってことは、今日で最後なんだ。


教材をカバンから取り出しながら考える。



「本当にありがとうね。私今すっごい自信がある!花マルもらえそうだよ」



思わず両手でピースサイン。

見ててよ、いつもバカにされてばっかりだけど
これからはできなくさせるから!



「えっ…」



そう声が漏れたのは、中島くんが私と同じように両手でピースサインをして
私の指に重ねてきたから。


そんな中島くんは下を向いたままで目は合わない。


ええええっ。
どどど、どうしたらっ…。


なぜかドキドキしちゃって、指先にしか意識がいかない。




「お前さ……本気で好きな奴いないの?」



……何を言い出すかと思ったら。


そのままぎゅうっと私の両手を握る。
男の子の大きな手は私の手なんて、簡単に包んでしまう。



「いないよ〜。私が好きになったのって、幼稚園のやまとくんしかいないんだ〜」



この前の動物園で言ったでしょ?


中島くんと同じ名前の、やまとくんっていう子のお話。


ずっと仲良しだったやまとくん。



「………そいつに今会ったら、好きになんの?」



顔を少し上げる。
手は握ったまま。


なんだかいつもと違う中島くんで、どうしたらいいのかわからない。



「そんなのわかんないよ」



「…………だな。悪りぃ悪りぃ。最後の勉強会するか」



急にくしゃっと笑って私の頭をポンポンと撫でると教材を開き出す。


どうしたのかなあ?

中島くんって、たまーに寂しそうな顔をする。


私の心配なんてよそに、
じゃーやんぞ、なんて言う。



「今日はもう最後だし、確認だけするぞ」



「う、うん…」



うーん…。
…まあいいか!


明日はテストなんだから集中しなくちゃ!


< 47 / 214 >

この作品をシェア

pagetop