意地悪なきみの隣。
「…あ、中島くん。これありがとうね」
久々に開いた数1のワーク。
『Fight!!』の文字を指差す。
「……ん」
目を細めて笑う。
こんな一言で、私は頑張れたよ。
「現代社会やるぞ。明日だからな、現代社会。俺が問題出すから、答えろよ。一問一答」
「うんっ!」
「あ、これ俺の勉強法。目つぶって答えるとちゃんと脳に残るんだ」
「そ、そーなんだ!やってみるね」
さすが、頭がいい人は違うなあ。
今回も一桁とるのかな?
目をつぶると、よし、と言って一問一答が始まる。
「ん〜じゃあ、国民の代表者が政府に加わる民主制を何ていう?」
「………ん〜、か、間接民主制!」
頭の中の記憶をぐるぐると巡らせる。
数学や現代文、古典、物理…たくさん覚えたから頭の中はパンパン。
その中から一つだけ、答えを出す。
「正解。じゃー次な?国会、内閣、裁判所が抑制と均衡をはかりながら政治を行うことを何ていう?」
「え〜…っと、よ、よくせい?き、きんこう?」
眉間にしわを寄せる。
なんだか普段使わない言葉がたくさん出てきて、頭の中はぐちゃぐちゃ。
「バカだなー。頭弱いなほんっと。正解は三権分立」
「さ、さんけんぶんりつ…」
そういえば、聞いたことあるような…ない…ような…?
やだなあ…、急に不安になってきちゃったよ。
「バカはちゃんと家で復習しろよ?」
「なっ…!ひどい!」
思わず目を開けるとそこには意地悪な顔の中島くん。
まるで小学生みたいな笑顔で私を見る。
「はいはい、目つぶった。まだやんぞ」
もう…と心の中で思いながらもう一度目をつぶる。
開いている窓の隙間から、夏の風が入り込む。
5時を過ぎた夏の風はすごく気持ちいい。