意地悪なきみの隣。
「さあ、郁。話してもらおうかな?」
「ひっ……陽菜ちゃん…怖いです…」
ぐいぐいと顔を近づけてくる陽菜ちゃんはまるでいつか見た昼ドラマの事情聴取みたい。
私はその分、後ろにさがる。
今日はテストの最終日。
全てのテストが終わって、少しピリピリしていた教室の雰囲気が一気に明るくなった。
『終わったー!いろんな意味で!』
『あー部活やっとできる!』
なんて声が飛び交う。
私はというと……。
ビックリするくらいどの教科もできた。
いつも空白が多い現代社会も数1も、いつもよりも書けた。
全部全部、中島くんのおかげ。
……なのに。
あの日から、中島くんとは一言も喋ってない。
いつもなら、挨拶をしてくるのに。
意地悪を言ってくるのに。
ふにゃっと笑うのに。
全部、なくなっちゃった…。