意地悪なきみの隣。



怒ってるのか悲しいのかよくわからない顔をしてる。



気づけばここには私たちしかいなくて、とても静か。




「西野、早く俺が誰か気付いてよ。俺、もうそろそろ限界だって」



「誰かって……中島くんじゃないの…?」



意味がわからない言葉に戸惑う私。



誰かって…誰なの?


全然、わからない。


何を考えてるの?どうして答えてくれないの?



「答えてよ中島くん…。どうしてキスなんか…」



そこまで言うと、動物園に行ったあの日と同じように急に視界が暗くなった。


それの正体はわかってる。


中島くんが私のカバンから取った黒のベースボールキャップ。


中島くんがあの日くれた帽子。


目の下まで被せられた帽子をあげると中島くんの顔がとても近くにあった。



わ、ち、ち、近いってば…!



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