意地悪なきみの隣。



「お母さん…この写真もらってもいい?」



「いいわよ」



そっとアルバムから抜くと、私はカバンから手帳を取り出して挟んだ。


ありがとう、と言って私は部屋へとあがった。



私が2度目に来た動物園でキツネを見たのは


中島くんと。


しかも、こんなふうにベンチに座って。



……似てるよね、やまとくんと中島くん。


体操服を貸してくれるし、
キツネも見るし、


やまとくんみたいに真っ直ぐじゃないけど優しいし。



名前が同じだと、性格も似るのかなあ。



「中島くん……」



そう呟いて、はっと我に返ったのはどれくらい時間が過ぎてからだろう。


1秒?1分?わかんない。


な、な、なんで私そんなこと呟いて…!


急に恥ずかしくなって思わずそばにあったクッションをぎゅうっと抱きしめる。



ば、バカだ……!


きっと、それくらい寂しいのかな。



3問目の答えはいらないって


キスをした理由は言わないって


俺が誰か気付いてって


そう言った中島くんの顔を思い出すと


なんだか切ない。



不思議な中島くんの不思議な言葉がずっと頭をぐるぐるまわっていた。



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