意地悪なきみの隣。



「はあっ…はあ……」



気付けば学校前に着いていた。


寒さなんてなくなって、むしろ暑いかな。


ケータイで時間を確認すると、もう7時を過ぎていた。


ちょうど部活が終わる頃。



「……尾原………大和…」



とっさに持ってきていた黒のベースボールキャップ。


握りしめて走っていたから、少しだけくしゃってなっちゃった。


形を整えて、タグを見てみる。


お母さんに言われて、今、初めて見た。


ちゃんと。そこにはちゃんと、



尾原大和



って書かれている。



知らなかったよ、こんなの。


全然見てなかった。



ずっとつけてたのに。



「あ……」



少し落ち着いて、顔を上げるとバスケ部の人たちが次々と校門を出て行く。


中島くん…中島くんは…?


でも、いない。

あれ?


今日、部活に行ったよね?


しばらく、壁にもたれて待っていることにした。


走ってかいた汗が冷えて、うんと寒くなった。


手袋してくればよかったなあ…。



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