意地悪なきみの隣。
そして待つこと15分。
中島くんは1人で私の横を通り過ぎる。
ードキッ
中島くん、私、わかったから。
ちゃんとお話してくれるよね?
「なっ……中島くん!」
久々に中島くんに向かって名前を呼ぶと、無性に緊張する。
でも、でも、中島くんは振り返ってくれなかった。
…聞こえて、ない?
ううん、絶対に聞こえてるはずだよ。
だって、夜だから静かだもん。
「中島くんっ!」
それでもきみは振り返ってくれない。
無視しないでよ。
私の話を…。
『郁ちゃん』
そっか…。
「や…………やまとくん!!」
今まで何回も呼んだ中島くんの名前よりも大きな声で。
するとピタッと足を止めた。
だから私は言葉を続けるよ。
「おはら……やまとくん……だよね…?」
ドキドキして言葉が途切れる。
ねえ。
早く答えて。
「気付くのおせーよ、郁ちゃん」
振り返った中島くんは、ふにゃっと笑う。
どうして、涙が出そうなんだろう。
鼻の奥がツーンとして、目がうるうるしてきて。
きみがやっと反応してくれたから?
笑ってくれたから?
やまとくんだって確信できたから?