意地悪なきみの隣。
「帰んぞ」
ポンポンと私の頭を軽く叩いて歩いて行っちゃうから、私はその横を歩く。
「写真…拾ったの」
「…え、写真?」
持ってくるの忘れたけど、ちゃんと家に置いてあるよ。
風が強い日、中島くんが落とした私たちの幼い写真。
「……通りで無いと思った」
「明日、持ってくるね」
私も手帳に挟んでるんだ、なんて恥ずかしくて言えないけど。
「中島くん」
「……」
「え…と、中島くん…」
「………」
………ん?
あれ、聞こえてるはずだよね?
だって隣にいるんだよ。
「や……やまとくん…」
「何?郁ちゃん」
べーって舌を出して意地悪に笑う。
その顔はいつもの中島くんと同じで。
なんだか安心した。
「中島くんって呼んでももう振り返んねーからな」
「は、はい…」
本当は、ずっとそう呼んでほしかったんだね。
鼻歌なんか歌って、リズムに乗っていっちゃいそうな足は私の歩幅に合わせてくれる。