ちょっぴり恋して
「未由!」

先輩は立ち去ろうとした私の腕をいきなりつかんだ。

「んぐっ。」

彼は私に無理やりキスしてきた。

「俺と元哉、どっちがいい?思い出して。」

「ぃやっ!」

私を壁に押さえつけた。

彼は私を離さなかった。

私は彼のキスを覚えていた。

先輩のキスはそこらの男ができるような単純なものではなく

キスに上級者がいたら

きっとするだろうというハイテクなキスだ。

女なら誰もが欲しがるようなもので

甘噛みだけでなく

ついばんだり

舌先を上手に使ったり

ソフトに吸い込んだり

強弱を微妙に使い分けた。

「未由、溶けた?」

「私に思い出させて満足だった?あの頃の私は先輩に夢中だった。ヴァージンを奪われたことは後悔してないもの。だって先輩のことが好きだったから、好きな人にあげたかったの。それだけよ。」

「未由、今度会った時は俺の腕の中だ。今のキスは後悔してないはずだ。」

「・・・・・」

図星だった。

彼の言ったことは当たっていた。

本当にその通りだった。

認めたくないけれど事実だった。

先輩のキスに即座に反応してしまった自分が怖かった。

こんなことがあるのか戸惑った。

「未由、顔を直してからホールへ戻れよ。」

彼は私の肩を抱いてそっとキスした。

温かくて優しいキスだった。

私の驚いた顔を見て笑った。

「俺を狂わせるなよ。」

彼は私をその場に置いてホールへ戻って行った。

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