ちょっぴり恋して
私は元哉さんと帰国した。

先に送った本も届き

箱を開けながら荒木先輩のことを思い出した。

あの時

ほんの数秒間だったのに

彼とのキスの熱い感覚が甦って私を戸惑わせた。

彼の強い想いに

今も鳥肌が立つほど彼を感じた。

私は彼が欲しいのかしら?

それとも、ちょっと懐かしいだけなのかしら?

どっちにしてももう一度彼に会うことがあっても

彼の全てを忘れようと思った。

無理に忘れられなくても

過去の思い出にできるのが大人だと思うし

今の恋を大切にできる自分でいたい。

そう思った。

元哉さんはクラブに戻り

レポート作成にも忙しいようだった。

私はいつものペースで仕事をこなしていった。

かおるさんには内緒で

現地でしか手に入らないコスメやサプリを買ってきたので

一人でにんまりした。

「サイモン、寂しかった?一ヶ月ぶりのご馳走よ。お代わりもあるわよ。」

私はイグアナの相変わらずの可愛さに気持ちがホッとした。

パクリと開けた小さな口が何ともあどけなくて私を笑わせた。

「あーんしてっ!」

パクリ、ムシャムシャ。

そばで見ていた元哉さんが言った。

「未由、荒木に何かされなかった?」

「いいえ、何も。」

「あいつ、俺から君を奪ってみせるとか何とか言ってた。ふざけたことを。」

「例えそうでも心配ないわよ。私は元哉さんにしか狂えないから。」

「君までがすごいことを言うじゃないか?」

「だって、本当のことですもん、ねぇ、サイモン!」

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