常磐色の意味。【短編】
ジリリリリという不快な電子音で今日も目を覚ます。
顔を洗い、制服に着替え、髪の毛を耳の下で一つにくくる。思い出の常磐色の髪紐で......。
今日は晴れていて、爽やかな感じのする朝だった。私は、その空気を味わいたくていつもよりも五分だけ家を早くでて、バス停まで少し遠回りをした。
バス停には一番乗りだった。バス停について一,二分たつと、次々と人が並び始めた。
並んでいる人は様々で、スーツを着たサラリーマンや、制服を身にまとっている学生。今日は金曜日だからか、スーツケースを持った若い女性もいた。
バスはたいてい予定時刻よりも五分遅れてくる。今は予定時刻の六時三十五分だ。バスがくるまであと五分ほどある。
単語でも覚えようかとスクールバッグを開いた。しかし、スクールバッグの中にはそれは入っていなかった。
暇だな、と思い初夏の空を見上げてみると高く澄んでいて、綺麗だった。
空は、浅葱色だった。
そしてその色によって、私の脳裏には彼らの笑顔が浮かんだ。
私の頬には、何かがこぼれていた。