常磐色の意味。【短編】



美優が途中でふと思い立ったように私にきいた。


「いつも思うけど、里愛の髪紐可愛いよね!」


それに合わせ、優奈もいう。


「それな! ほんと綺麗な色だよね! なんていう色なの?」

私は答えた。


「常磐色だよ」


常磐色は杉や松などの常緑樹の葉の色で、「ずっと変わらない」色と言う意味だそうだ。


「どこで買ったの?」


「もらったんだ、大好きな人に。」


空を仰ぎながら答える。


すると美優がすかさず聞く。


「ちょっと、里愛に大好きな人なんていたんだぁ。どうなの? 付き合ってるの?」

彼女たちはニヤニヤとしている。
正直、気持ち悪い。


「うん……。私の最初で最後の愛する人かな。いや、"だった"かな」


少し雰囲気が重くなってしまったような気がする。そんな空気を明るくしようとしたであろう優奈がいった。


「最初で最後なんて切ないこといいなさんな。男はひとりじゃないんだから」

優奈の変なしゃべり方を聞いて思わず笑ってしまう。


「そうだね。でも、また会えるかわからないけど、会えるって信じてるんだ」

私はそういって笑ってみせた。
美優も優奈も笑う。わたし達は一気に吹き出した。



次第にどんどん会話は変わった。
テストのこと、部活のこと……。


普段なら必ず彼氏とのノロケ話をする二人がしなかったのは彼女たちなりの気遣いだろう。


友達に気遣いをさせることがないくらい、強くなりたい。

そう思った。



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