恋のはじまり
課長の後ろを着いて行くとそこはリビングだった。
(さっきの部屋は寝室だったのね。緊張しててあんまり覚えてないけど。)

「適当に座って待ってて。コーヒーでいい?それとも紅茶の方がいいかな?」

「コーヒーで大丈夫です!」

緊張で思わず声が大きくなってしまった。

「ふっ。そんな緊張しなくて大丈夫だから。とりあえず座って。」

課長に促されて私はソファーに座った。
ペールホワイトのソファーの座り心地は柔らかくて気持ち良かった。
部屋を見てみると、白とベージュを基調にされていて明るい柔らかい印象の部屋である。
(課長のイメージそのままの部屋…)

誰にでも優しい課長。課長の立場なのに全然偉ぶっていなくて、部下にも分け隔てなく接してくれている。物腰は柔らかくてスマート。依然一緒に外回りをした時に車のドアをわざわざ開けてレディファーストをさらっと出来る人。

そんな課長にぴったりな部屋だと思っていたら課長がコーヒーを持ってやってきた。
「はい、どうぞ。インスタントだけどごめんね。」
課長の事を考えていた最中だったので思わず顔が赤くなってしまう。
「お、お構いなく!ありがとうございます。」

コーヒーは温かく少し甘くて美味しかった。早まっていた鼓動も少しは落ち着いてきた。
ちらりと前に座っている課長を見ると、課長もこっちを見ていてバッチリ目があった。

「ちょっと甘すぎたかな?どう、少しは落ち着いた?」

「美味しいです。お、落ち着いてきました。」

そう言ったものの、微笑む課長と再び目があってしまったらまた心臓はうるさく騒ぎ出してしまった。
課長の部屋に2人きり。そして向かい合ってコーヒーを飲んでるなんで昨日までは考えられない状況に緊張は最高潮に達している。出来ればこのま逃げ出したいけれど、どうしてこんな状況なのか確かめないといけない。
けど聞きたいけど、何があったか聞くのが怖い…。膝にお置いた手には思わず力が入ってしまう。

「昨日の事だけど…」

「…はっ、はい!」

「話しても大丈夫?」

聞けずにいた私をよそに、課長の方から口火を切ってくれた。

「だ、大丈夫です!教えて下さい!すみません、私は何をしてしまったのでしょうか?!」

もう腹をくくって聞くしかない。居ずまいを正して課長の話を待った。

「昨日は、課の歓迎会で皆で飲んだのは覚えてる?」

「…はい!それは覚えています。西山さんと加藤さんの歓迎会で、昨日は楽しくてつい、いつもより飲み過ぎちゃっていて……。」

昨日は歓迎会があって、今までは私が1番年下だったけれど後輩が出来る事が嬉しくて、ついいつもよりお酒のぺースが早くなってしまっていた。

「それで…飲み過ぎちゃって、そしたらすごく眠くなっちゃって……」

眠くなったその後は思い出せない。

「そ、その後は、ど、どうなったのでしょうか?」

「覚えてるのはそこまでかな?
そのあとはね…。」

そこで一旦課長は切る。私の背中には冷や汗がたらりと流れた。少し間を取って課長は続けた。

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