恋のはじまり
その後、朝食も一緒に食べようと誘われたが丁重にお断りした。
それでも送って行くと課長が譲らないので、課長の車で家まで送ってもらう事になった。

「朝飯も食べて行けば良かったのになぁ。」

「そんな!これ以上迷惑かけれませんので、お構いなく!」

これ以上課長と一緒にいたら心臓が持たなくなってしまうので早く帰りたかった。
今も課長の車の助手席に乗っていると思うと心臓がドキドキとうるさく騒いでしまっている。

チラリと隣の課長を見て見ると、慣れた様子で運転する課長。そして捲ったシャツから見える腕が思っていたよりたくましいのに気がついてつい見入ってしまった。

(この腕にさっきまで抱き締められてたんだよね…)

そんな風に思い出してしまうとまたボッと顔が赤くなってしまった。

「どうかしたか?」

「いえ!…ちょっと暑くなりましたね。」

今日顔を赤らめるのは何度目か分からないので、課長に悟られないように誤魔化した。
「そっか?じゃあエアコン強くするね。」

上手く誤魔化せたと思ったが、課長は何だか楽しそうにニヤニヤ笑っている。

「何ですか、課長!?何かしました?」

「いいや、何でもないよ。」

そう言う課長の横顔は微笑んていた。
私はそれ以上聞けなくなったので、景色を見るふりをして窓の方に顔を向けた。
窓に映る私の顔はやっぱりまだ赤かった。
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