恋のはじまり
「あ、ここです。その門の所で大丈夫です。」

程なくして私のアパートに着いた。

「送って頂いてありがとうございました。今日は本当にご迷惑をおかけしてしまってすみませんでした。」

お礼の言葉と共にもう一度謝罪する。本当何度謝っても気が済まない。

「笹本、もう謝らなくていいから。今日明日はゆっくり休みな。それでまた月曜からまた頑張ればいいから、な、」

課長はにっこり笑って言う。
その温かい言葉に胸がキュンっとした。

「はいっ!私、頑張りますので!今日は本当にありがとうございました。」

再びお礼を言って降りようとしたが、
「笹本、髪変になってる。直すよ。」
そう言って課長の手が私の髪に触れ、サイドの髪を耳にかけてくれた。

「あり…」

ありがとうございます。と言いかけた時、

「ちゅっ」

柔らかな感触を右耳に感じた。

「笹本の耳は可愛いな。ごめんね、つい。」

隣の課長を見ると、朝目を覚ました時と同じように微笑んでいた。

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