いけてない私の育てかた
次の授業を受けるため反対する楓をなんとか説得していつも通りの私に戻って教室に入る。

クラスメイトはちょっと遠巻きに私達を見ていたけど特に話しかけられなかったのでほっとしていると佐藤くんが、

「早乙女さん大丈夫?

まだ頬っぺた少し赤いね。」

「だ、大丈夫です。」

そう言われた後たぶん私の顔は何処がぶたれた所なのかわからなくなるほど顔全体が真っ赤になってたと思う。



「お邪魔します。」


「今家誰もいないから気を使わなくて大丈夫だよ。」

階段で2階に上がり楓の部屋に入る。

来る途中コンビニでジュースとお菓子を買ったのでそれを楓に渡し気を使わなくていいのにと言いながら机にそれらを並べていく。

「それじゃあ始めるよ。」

楓は私のメガネを外し前髪をポンパドールにしてからテキパキと慣れた手つきでハサミを使って眉毛を整えたり筆を使って器用にラインを引いたりしている。


「よし、できた。」

楓が私の前に鏡を置く。

恐る恐る鏡に映った自分顔を見るとそこには誰?と言いたくなるような顔が映っていた。

「えっ、これわたし?」


なんども鏡をみながら色んな所を触って自分の顔であることを確認する。

「どう?」

満足そうに笑う楓に、

「す、すごい!

私じゃないみたいだよ。」

今ままで手入れしてなかった眉毛は前より少し細くて綺麗な弓のようなラインに仕上がり、つり目がアイラインでピョンと目尻に跳ねるように入れただけなのに可愛らしくなっている。
後で聞いたらこれは猫目メイクなんだそうで、二重でつり目の私にはとてもよく似合うメイクなんだそうだ。
そして全体の印象を柔かくするためにブラウン系のシャドウでぼかす。
元々毛量の多い睫毛にはマスカラはかえってキツくなるだろうと何もしないことに。

「ほのかは自分の顔の何処が一番嫌い?」

突然楓か聞いてきた。

そんなの決まってる。

「目……。」

「やっぱり、

あのねほのか。私ほのかの目が一番のチャームポイントだと思うよ。」

小さい頃からこの目のせいでどれだけ私が傷ついてきたか、その目がチャームポイントなんて。

「うそだよ。そんなの。

だって今まで目を合わせれば怖いだの石になるだの散々酷い事言われてきたんだよ。」

「そうだよね。

でもそれはほのかの目の使い方だと思うよ。」


使い方?目に物を見る以外にどんな使い方があるんだろう?


「ほらっ、諺で、目は口ほどに物を言う。ってのがあるでしょ?

ほのかの目はまさにその通りなんだと思う。ほのかの目は良い意味でも悪い意味でも人を惹き付けるんだよ。

だから意識して相手を見ないと相手は自分の気持ちを見透かされてるみたいに思って怖くなるんじゃないかな?」


そんな事いままで考えた事もなかった。
ただ、自分の目はつり目で輪郭もハッキリしているせいでキツく見える。ってそういう風にしか考えてこなかった。

「そうなのかな?」


「それで、私は普通に見てるだけで相手が勘違いするならほのかが慣れるまで化粧で和らげてあげようって思ったの。」


確かに楓の言う通り今私のアイメイクは全体にブラウンを基調とした柔らかな印象を与えるメイクになっている。

「さっ、これからほのかにはこのメイクをマスターしてもらわなきゃ。」

私はその後1時間ミッチリ楓に特訓してもらいなんとか自力でメイクできるようになった。

「ほのかは肌が白くてきめ細かいから他のメイクはいらないと思う。

それとせっかくこれからほのかの武器になる目は絶対隠しちゃダメ。

だからメガネはもういらないね。」

武器って私何と戦うの?

楓はあっさりと私のメガネをゴミ箱投げてしまった。
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