いけてない私の育てかた
家に帰って私の顔を見たお母さんは泣きながら凄く可愛いと何度も何度も言って喜んでくれた。

夜になると私のメイクに合わせていつの間にかヘアーカラーまで買ってきて染めてくれた。

お風呂から上がってメイクは落ちてしまったものの髪の色だけで人ってこんなに変わるんだなぁーと感心させられてしまった。


私は次の日の朝いつもより30分程早く起きて昨日楓から教わったメイクをした。前髪は勿論ポンパドールで。


小学生以来メガネをかけずに人前に出ることがなかった私は不安になりながら下駄箱に向かう。

どうしよう。皆が今までと同じ反応だったら。やっぱりメガネ返してもらった方がよかったかも。

上履きを履いて廊下に出ようとした時、


ドン!

思いっきり何かにぶつかってしまった。

ん?でもあんまり痛くないかも。

「大丈夫?」

痛くない訳だ、ぶつかったのは物ではなく人だったんだもん。

「す、すみません。」

頭を下げて顔をあげると上からその人は私の顔を覗きこむ。

ヤバい!目が合う。

目を反らしたが遅かった、バッチリ目が合ってしまった。

仕方がないのでもう一度謝ると、その人から信じられない言葉が返ってきた。

「君可愛いね。

何年生? それよりどこも痛くない?」

可愛い?誰が?

あれっ?もしかしてぶつかったのって私じゃないのかな?

「君だよ。」

そう言って私の顎を軽く持って上に上げて自分に視線を合わせさせる。

「あー、やっぱり、さっきは一瞬だったけど、君ってホントに可愛いね。

特に目が凄く綺麗だ。」

嘘だ、絶対嘘だ!

これは夢?私まだ寝てるのかな?


茶髪に天然なのだろうか少し癖のある髪に切れ長の目に決して大きすぎない高い鼻。
それに……左耳にピアス?

なんかこの人怖いんですけど。


「そんな見つめられたらキスしたくなっちゃうんだけど。」

なんか顔が近付いてきてません?


「先輩! 譲先輩。

そこにいたんですか。キャプテンが呼んでますよ。何で朝練サボってんだ。ってね。早く行った方がいい……。」


「早乙女……さん?」

夢から現実に引き戻される。

佐藤くん。マズイ顔隠さなきゃ。

逃げようにもなぜかその譲先輩とやらに顎と腕まで掴まれて逃げられない。

「何祐也彼女と知り合いなの?」

「は、はい。同じクラスですから。」

「ふーん、そうなんだ。1年お前なん組だっけ?」


「5組ですけど。」

「1年5組の早乙女さんね。」

一人で納得して行ってしまった。
< 11 / 66 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop