いけてない私の育てかた
「早乙女さん、大丈夫?

何かあったの?」

いかんいかん、目を合わせないようように話さなくちゃ。

「ううん。

ちょっとぶつかっちゃっただけですから。」

「それより、何か早乙女さんいつもと雰囲気違うね。」


「やっぱりおかしい?」

はっ、私ったら何佐藤くんにそんな事聞いてるのよ。

「いや、何て言うかそのー、可愛い。」


ビックリして思わず佐藤くんの目を見てしまった。

佐藤くんはうわっ!とか言いながら私から視線をそらす。

だよね、やっぱり。

「ありがとう。」

佐藤くんは昔から誰にでも優しかった。こんな私にも。でも今のでわかったよ。ごめんね、無理に言わせるようなこと聞いて。
心の中で謝りながら教室へ向かう。

朝の不安はさっきの佐藤くんとのやり取りですっかり忘れていた私は何時ものように教室に入る。すると急に教室中がざわざわする。


ん?なんだろう?そう思っても顔を上げることのできない私に一人の女子が話しかけてくる。


「あのー、もしかしてクラス間違えてません?ここ5組ですよ。」

うん5組でしょ。わかってますよそんな事。

「はい、5組ですね。」

そう返事して自分の席のある窓際まで行こうとすると、

「ちょっと、だから5組なんだけど?
って言うか貴女誰?」

これは何かの冗談なのかな?いくらなんでも……。あっ、そうか昨日の仕返しのつもりなんだ。私を席に付かせないつもりなんだ。


勝手にそう思った私は無視して自分の席に向かう。その私の腕を掴み無理に自分の方に向けると、

「シカトしてんじゃないわよ。」

またしても彼女は腕を上げる。

私はまたぶたれると思い目を瞑るがいっこうに痛みがこない。恐る恐る目を開けると彼女の振り上げられた腕を佐藤くんが掴んでいた。

「おい、昨日の今日でまた早乙女さんをビンタする気?」


腕を掴まれた彼女は、佐藤くんに睨まれてるのと佐藤くんの言った言葉の両方にショックを受けたらしく物凄い顔をしていた。


「さ お と め?」

誰もが驚いて私の方を見る。

今まで視線をそむけられたことはあっても見られたことのない私はどうしていいのか困っていると、楓が教室に入ってきて私の所にきて、

「おはよう。ほのか。」

「お、おはよう。かえで。」

皆が更に驚くのを関係ないと言わんばかりに楓は私を連れて自分の席に座った。


どうしよう。佐藤くんにお礼言いたいんだけど、でもまた嫌な思いさせちゃうし。仕方がないので私はノートを破いてお礼を書いて佐藤くんの机に置いた。


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佐藤くんへ


今朝は2度も助けてもらってありがとうございました。


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迷惑になるといけないから自分の名前は書かないでおいた。読めばきっとわかるだろうから。


暫くすると

ツンツン。

私の肘を佐藤くんがつついてきて私に紙の切れ端を渡してきた。

てっきり私が書いた紙を返されたのかと思って読まずにいるとまたツンツンと、小さい声で「読んで。」って。慌てて紙を広げると私のじゃない字ってことは佐藤くんだよね。

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早乙女さんへ


どういたしまして。

それより、前から気になってたんだけど、どうしてタメなのに敬語なの?
これからは、タメ語でお願いします。


佐藤 祐也

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