いけてない私の育てかた
「早乙女さんだよね?」


「は、はい。

今朝は本当に申し訳ありませんでした。

今日は生憎持ち合わせがなくて、あ、明日必ず持ってきます。」


「なんの話し?

クスッ 面白いね早乙女さんって。」


面白い? 私が?

私は全然面白くないですけど。

「ですから今朝ぶつかった所が痛みだして慰謝料を渡せとかいうことですよね?」


ぷっぷー

「あっはっは。

違う違う。 あー、でもそうかも。」


違うのそうなの、どっちなの?

「うん、確かに痛いかも。」


やっぱり、慰謝料請求だー。
お父さん、お母さんごめんなさい。

「ここがね。」

譲先輩とやらはそう言いながら自分の胸を軽く叩いた。

「えっ、心臓ですか……、そ、そんな。

大変じゃないですか!すぐお医者さん行かないと。」


心臓が痛いなんてただ事ではない、もし私のせいで心臓発作とかになって倒れて最悪……。

いやー!人殺しー!

私の顔がみるみる青ざめていく。

「ごめん、ごめん。

俺の言い方が悪かったよ。なんか早乙女さん勘違いしてない?」


勘違い?何を?

「ちゃんと説明したいから今日の放課後迎えにくるね。」


出来れば今すぐ説明して欲しいんですけど。

余りの怖さに言う勇気はなくただ頷くしかなかった。

席に着くまでクラスの女子は、あのイケメンは誰だとか、あれはサッカー部の時期キャプテンでファンクラブまである譲先輩だとか、何でそんな先輩があのメデューサに用があるのかとか色んなことを言っていたが私は動揺するあまり私の耳には少しも入ってこなかった。

ただ救いなのは佐藤くんが学食に行っていたのでこの事を知らないことだ。もし知っていたら午後の授業にきっと聞いてくるにちがいないから。

いくら聞かれても私自身がよく分かっていないのだから説明のしようがない。

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