いけてない私の育てかた
「ご馳走さまでした。」

ついついいつもの癖で両手を合わせて声に出して言ってしまった。

しまった。気が付いた時にはもう遅かった。

クスッ

「早乙女さんっていつもそうしてるの?

なんからしいよね。俺も見習わなきゃ。」


何て言いながら、

「ご馳走さまでした。」

って両手を合わせてくれた。

それにしても佐藤くんって何しても絵になるなぁー。

レジに向かう佐藤くんを追って私も慌ててお財布を出そうとすると、

「さっきも言ったでしょ。
俺は女の子にお金は出させないって。」

そうなのだ、ボーリング場でも決して私のお金を受け取ってくれなかった。

「でもそれじゃあ悪いよ。」

「いいから、いいから。」

ってさっさとお会計をしてしまった。

でも私は決めていた。次もし佐藤くんが払うような事があれば言おうと。

「佐藤くん。

それなら次のプラネタリウムは私が払うね。でなきゃもう佐藤くんとは行けないよ。
佐藤くんの気持ちは凄く嬉しいけど、でもそれは彼女さんにしてあげなきゃ。」

こんなことを言ったら佐藤くん気を悪くするかもしれない。怒って帰ってそれでもう友達じゃない。って言われるかもしれない。それでも私は佐藤くんに迷惑はかけたくなかった。

暫く佐藤くんは考えてから。笑顔で

「分かったよ。早乙女さんに帰られるのは嫌だからプラネタリウムは奢ってもらおっかな。」

ほっ、全身の力が抜けて膝から崩れそうになる。

ガクッ

ヤバい転びそう。

恥ずかしいこんな所で転ぶなんて。思わず目を瞑ると

ぎゅっ

「大丈夫?」

私ったら佐藤くんに抱きしめられてる。

「きゃっ、

ごめんなさい。私……。」

佐藤くんと目が合う。

「い、いや。」

ん?助けてもらって恥ずかしいのは私なのに何で佐藤くんが赤くなるの?

って考えてる間私ったらじっと佐藤くんを見つめてたみたい。

「さ、早乙女さん。

そんなに見つめられたら困るんだけど。」


はっ、

「ご、ごめんなさい。

本当にごめんなさい。」

あー、穴があったら入りたいとはまさにこの事だわ。

「いや、そんな意味でいったんじゃ。

ごめん。嫌だって意味じゃないから。ホントに。

ほらっ、前に言ったでしょ。早乙女さんに見つめられると恥ずかしくなるって、そう言う意味でだから。ねっ。安心して。」

クスッ

佐藤くんそんなに必死に言い訳しなくてもいいのに。

「うん。そうだったよね。

私なら大丈夫。

さっプラネタリウム行こう。」

そして自分でも無意識に佐藤くんと手を繋いでた。
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