お菓子な男の子
放課後、部室に直行した。別に楽しみにしてるわけじゃないけど……ないけど!


「誰もいない」


早く来すぎたかな……


「杏奈ちゃん」
「うひぁあ‼」


後ろから急に抱きつかれた!だ、誰!?


「なんかこうするのも久しぶりだね。君の温もりがなつかしいよ」
「こんなことされるのは初めてです。訴えますよ、セクハラで」
「えっ、俺が杏奈ちゃんの初めてを……責任とるよ」
「いいから離してください、千夜先輩」


一気に冷めた。千夜先輩の過度なスキンシップには耐性ができた。
でもこんなところ花梨ちゃんに見られたら……


「安心して。花梨は今日、館長さんの手伝いがあって帰ったんだ」
「そうですか。離してください」


変な嫉妬と誤解はされなさそうだけど……あれ?まさか……


「今日の部活……2人ですか……?」
「……だったら良かったんだけど」


ムッとした顔で部室のドアの向こうを見た。


「もういい?いい加減突き飛ばすよ、チヨ先輩」
「はいはい。ごめんね杏奈ちゃん。もう少しこうしていてあげたかったけど、うるさいからさ。マシマリョくんが」
「真島くん?」


振り向いた先には、入部届け受取書を持った真島くんが立っていた。


「僕も天文部に入ったから、よろしくね」
「うん、よろしく。でもなんか不思議な感じ。今まで一緒に活動してるほうが多かったから、天文部員じゃなかったんだなって」
「僕もさ、入部しなくても参加できるから良かったんだけどね」


千夜先輩をチラッとみた真島くん。
きっと部長権限がどうのこうのって言われたんだろう。それで入部……か。


「さ、マシマリョくんの紹介も終わったし、今日は部活終わり!杏奈ちゃん、一緒に帰ろうか!」
「ちょっとチヨ先輩!夏休みの話決めないとなぁってわざとらしいひとりごと言ってたよね?」
「そのあとに杏奈ちゃんと2人きりでって言ったのは聞こえなかった?」
「絶対今付け足したでしょ‼」


やっぱり……部員が増えたら問題も増えた。ここにリンゴと花梨ちゃんがいたら……2人を頼りたいなんて、そんな珍しいこともないよ。
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