お菓子な男の子
夜、しおりを見ながら斗真に電話した。天文部じゃない斗真に、決まったことを教えるため。
3回のコールで、斗真の声が聞こえた。


「もしもし」
「今日は早いじゃん。もしかして、私の電話待ってた?」
「んなわけねぇだろ」
「昨日の夜から感じ悪いなぁ!冗談には冗談で返すのが常識でしょ!」
「用件は?」


もう!ほんと無愛想なんだから!真島くんと大違い。今日の部活帰りだって、いろんな話して、私の言葉にちゃんと返してくれて、優しくて、喧嘩にもならないし、落ち着くし……


「用件は?」
「あぁ天文部合宿流星群観察ツアーのことなんだけど、今日だいたいの詳しいこと決まったから教えようと思って。しおり的なのあるんだけど……」
「俺の分もあんの?」
「もらっといた、けど……明日渡すね」


あれ?なんで私、わざわざ電話したんだろう。そうだよ。明日の朝どうせ会うんだから、そのときでよかったじゃん、この話。
明日渡すね、とか自分でも電話した意味わかんない。斗真だって……


「窓開けろ」
「え?」
「いいから窓開けろって」


言われた通りにすると、目の前には、電話を耳に当てた斗真がいた。


「しおり的なやつ、もらいにきてやった」
「あ……」


絶対文句言われると思った。明日でいいだろって正論まくしたてられると思った。
なのにどうして……


「サンキュな。じゃ」


私の持っていたしおりをつかむと、また窓から出ていった。
部屋に残ったのは呆然としている私と外の風。


私の予想に合わない斗真の行動に対応できない。
ときどき、私は斗真に動揺してしまう。そんな自分が不思議だ。
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