お菓子な男の子
リンゴの勉強は、結局夜までかかった。リンゴの両親は帰ってこなくて、私はそのまま泊まることにした。久しぶりにリンゴの作った夕ご飯を食べたけど、一人のことが多いからか、家庭的なリンゴが見れた。


朝も、お母さんみたいに私を起こしにきた。


「アンちゃん、朝ご飯できたよ」
「………ん。ありがと」
「着がえて顔洗ってきてね」
「うん」


眠い目をこすっている私をあとに、部屋を出ていくリンゴの後ろ姿はどこか楽しそうだった。
リビングに入ると朝ご飯のにおいがお腹を刺激する。


「おいしそう。お腹がすく朝って初めてかも」
「ふふっ。ママもね、私の朝ご飯はおいしいって言ってくれるんだよ!食べよ……あ、先に食べてて!」


リンゴは音の鳴った洗面所のほうに走っていく。
私はありがたく一口目を運んだ。おいしい。


「リンゴ洗濯?」
「うん!今日ママ帰ってくるから、今のうちにって思って!」
「なんかもう主婦だね」
「いつでも結婚できちゃうよ!」


朝からバタバタと忙しそうなリンゴ。
朝ご飯はおいしいし、家事もしっかりできるし、勉強だけがすべてじゃないなぁ……なんて痛感。
私は全部お母さんに頼っちゃってる。よくヘラヘラしてるリンゴだけど、いろんなことを抱えてるのかもしれない。


「そうだ。アンちゃんは今日予定あるんでしょ?」
「あー、うん。斗哉くんが帰ってくるんだ。会おうと思ってて」
「斗哉くん?だれ?」
「斗真のお兄ちゃん!ほらリンゴ、教科書とかノート借りたでしょ?」


リンゴは少し悩んで、手をポンと打った。


「あぁ!頭のいい人だ!」
「3年ぶりに会うんだ」
「じゃあ斗真くんも一緒?」
「えっ?」


斗哉くんに会う、そればっかりで斗真のことなんて考えていなかった。アイツだってお兄さんと会うのは久しぶりのはず。
そっか、私より普通は家族の斗真優先だよな……


「そろそろ行かなくていいの?アンちゃん」
「あ……い、行くね!ご飯ありがとね、リンゴ」
「こちらこそ勉強ありがとー!」


私はリンゴの家を後にした。
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